クーリングオフできる実例
浄水器の例
浄水器の販売事例いきなり自宅に「水質検査に来た」と訪問してきた人から「検査したら大変水が汚れています」と言われ、浄水器を使用するよう奨められた。そして、30万円の浄水器を分割払いのクレジットで契約した。訪問してきた人は、たまたま浄水器を持参していると言い台所に取り付けていった。その後、冷静に考えると水道局の人が浄水器を販売するのはおかしいと思い、水道局に問い合わせたところ水道局とは全く関係がないと分かった。もらった書類にクーリングオフできると書いてあったので翌日クーリングオフの通知を出した。しかし、販売会社からはキャンセルするなら商品は引渡し済みで使用しているのだから、と解約料を請求された。また、商品は自分で返送する手配をするように言われた。
ポイント
1. クーリングオフ後は、事業者は一切の金銭の請求はできない。2. 事業者側が商品を引き取る。返還の費用も事業者側が負担する。
(クーリングオフの効果)
クーリングオフをする旨の通知を期間内に相手の事業者に発信すれば発信した時点で契約は最初にさかのぼってなかったことになる。事業者はクーリングオフされた契約に関して一切の金銭の請求をする事はできない。解約手数料などの請求ができないのはもちろん、どのような名目のものであっても、一切請求できない。クーリングオフ期間内に事業者によって浄水器が取り付けられたために、クーリングオフをする前に使用してしまった場合でも、使用料などの名目の金銭も請求することはできない。また、その契約に関して消費者から支払われた金銭も、全てすみやかに返金しなければならない。
(受け取った商品の返還)
契約は最初にさかのぼってなかったことになるから引き渡された商品があれば、事業者に返還しなければならない。使用済みのものであってもそのまま返還すればよい。クーリングオフ期間内に商品の引渡しをすれば、使用してからクーリングオフが行われることは十分予想できる。クーリングオフ期間に商品の引渡しをする以上は、事業者は当然こうしたことを承知していると思われる
ただし、法律上「消耗品」として指定された一部の商品については別の扱いになっている。使用してしまった場合、その使用したものはクーリングオフできないものがある。詳しくは・・・・
(商品を返還するための費用)
商品を事業者に返還するための費用は、事業者が負担することになっている。消費者は、クーリングオフの通知をするときに、「引渡し済みの商品を速やかに引き取ってください」と言うこともあわせて求めておくとよい。なお、クーリングオフをしたら、商品を使うのはやめて、いつでも返せるように保管しておく。
屋根工事の例
いきなり自宅に工務店の従業員らしい人が訪問してきて「近所に屋根の工事で来ているがたまたま通りかかって屋根を見たら危険な状態になっている。と言われこのままだと危険だと。「近所に来ているから安く工事ができる」とも言われた。びっくりして依頼することにした。翌日すぐに工事に来て数日で終わった。その後、知り合いの工務店の人に話したら、費用が高すぎるし急いで工事をするほど傷んでいなかったと言われた。8日以内はクーリングオフできると聞いていたのでクーリングオフの通知を出した。すると、事業者から「工事は済んでいるのだから工事代金を支払うのは当然だ。支払わないなら屋根を引き剥がしに行く」と大変な剣幕で連絡がある。工事が済んでいれば、工事代金の支払いはしなければならないのか?
ポイント
1. クーリングオフをした場合工事費用なども一切請求禁止。
2. 行われた工事はクーリングオフをした場合でもそのままで良い。
(工事代金も払わないでよい)
「屋根用パネルをはる工事」は、特定商取引法の指定役務で、今回の場合自宅訪問販売なのでクーリングオフすることができる。問題は工事がクーリングオフ期間に終了しているため工事代金をどうすればよいのかということ。この点については法律では事業者は一切の金銭請求をする事はできないものと定めている。したがって、事業者は工事をしていた場合であっても、クーリングオフをされた場合には、工事費用なども一切請求することはできない。
(工事の原状回復)
「代金を支払わなければ工事をした屋根をひきはがす」ということは、許されない。原則的には行われた工事はクーリングオフをした場合でもそのまま。
事業者の判断で一方的にこのような行為に出た場合は「現住建造物損壊罪」か「動産損壊罪」などの犯罪になる。警察に届けるべき。ただし、土地や建物、その工作物の現状に変更を加えるサービスの場合には、消費者のほうに「原状回復を請求する権利」がある。工事をする前の状態に戻してほしいと消費者は要求できる。消費者が原状回復を求めた場合には、事業者は無償でつまり、事業者負担で工事をする前の状態(原状)に戻さなければならない。
この原状回復請求権は、消費者の権利。原状を回復するかどうかは、消費者が自由に選択することができる。
消化器販売の例
自宅に「消防署のほうから消火器の点検にきた」と制服を着た人が訪問。法律が変わって消火器の設置義務があるといわれてびっくりしてその場で購入、代金は2万円を支払い消火器を受け取る。その後、念のため消防署に問い合わせたところ、消防署から訪問販売することはないし、法律で設置義務があるわけでもないことがわかる。だまされたと思い契約をやめたい。
ポイント
1. 契約書に虚偽の記載、不備があればクーリングオフできる。
2. 現金取引の場合、3,000円未満ならばクーリングオフできない。
(自宅訪問販売で指定商品)
消火器は、政令指定商品のため、クーリングオフの対象。契約して契約の内容を記載した書面をもらった日から計算して8日目以内であれば、クーリングオフできる。相手が消防署員であると思い込んだということで、契約書にそのような虚偽の記載がされている場合、商品の内容、型式、数量、価格、引渡し時期、支払い方法、販売業者の住所、名称、販売担当者の氏名など記述に不備がある場合には、書面をもらってから8日以上経過していてもクーリングオフができる。これは法律で定められた記載事項に不備がある場合には完全な書面とはいえないために、クーリングオフの起算日に該当しないと考えられるためである。
(現金取引の場合)
今回の場合の特徴はその場で代金を全額支払い商品の引渡しも終わっているという点。このような取引のことを「現金取引」という。現金取引の場合にも原則としてクーリングオフ制度の適用がある。ただし、3000円未満の取引で現金取引の場合にはクーリングオフの適用はない。訪問販売で代金が2,980円などというものがあるが、これはクーリングオフを回避するための手段。
(クーリングオフをすれば救済されるとは限らない)
注意しなければならないのはクーリングオフをすれば完全の解決できるとは限らないということ。代金の支払いをしていない場合には相手に対してクーリングオフの通知をして代金の支払いも拒否すればいいわけで簡単に解決できる。しかし、現金取引の場合には代金のすべてを支払い終わっているのでクーリングオフの通知を出してから業者に代金の返還と商品の引き揚げをさせることになる。消費者被害の実例を見ると現金取引の業者の場合には業者が支払い済みの代金を返還してこないことが多く見受けられる。法律的にはクーリングオフは有効なので業者には代金として受領したすべての金銭を速やかに返還しなければならない義務がある。問題は業者がこの法律上の義務を無視することが多いということ。こうした場合には消費者としては、業者を相手に裁判を起こして判決を取り相手の財産に対して強制執行するという方法をとる。しかし、わずか2万円前後のことでこれだけの手続きをしていたのでは費用倒れになってしまう。資産のない業者の場合には差し押さえるべきものがなく判決をとっても強制執行ができない場合もある。いずれにしても良く知らない相手と現金取引するのは危険が伴うことは承知しておく必要がある。
点検商法の例
自宅に「シロアリの無料点検をする」と訪問してきた業者に点検を依頼した。床下にもぐりこんで点検をした結果「シロアリがわいているからはやく駆除しないと家がだめになる。」と言われてあせって申し込みをした。1日も早く駆除すべきだと言われて当日、駆除をする。その際、「特に本日お願いして駆除してもらうものであり、契約解除は致しません。」という念書に署名捺印を求められて提出した。駆除は終わっているし、念書も書いているのでクーリングオフは無理か?
ポイント
1. 契約解除をしない、という内容の念書は無効。
2. 無料点検後でもクーリングオフできる。
(クーリングオフしないという特約)
まず、シロアリ駆除は「有害動物・植物の駆除及び防除」という指定役務(サービス)に該当する。そして今回の場合、訪問販売に該当するので、契約した書面の交付を受けてから8日以内であればクーリングオフが可能である。問題となるのは、「契約の解除をしない」という念書を書いているということ。しかし、特定商取引法では、クーリングオフに関する当事者間の特約で「法律の趣旨よりも消費者にとって不利なものは無効である」と定めている。消費者にとって法律の内容よりも有利な特約ならば有効であるが不利なものは消費者保護の精神に反することから無効となる。たとえば、「クーリングオフはできません」などと契約書に記載してある場合や、クーリングオフ期間が8日よりも短くなっているなどが法律よりも不利な特約の典型例。逆にクーリングオフ期間を10日間にするなど、法律で定めたよりも消費者に有利になっている場合にはその特約は有効となる>
(サービスの提供がされている場合)
法律で特別に定めた場合以外は、業者が契約の内容の履行をした場合でも、クーリングオフ期間内であればクーリングオフができるものとしている。このような制度になっているのは、業者がクーリングオフ期間内にサービスの提供などの契約上の履行をしてしまうとクーリングオフができなくなるというのでは強引に急ぐ業者と契約した消費者には、熟慮期間が確保されていないこととなり結局消費者保護の考え方が維持できないためという基本的な考え方が前提として捉えられている。結局クーリングオフ期間内にサービスの提供をしてしまう業者はもし、その後にクーリングオフされたとしてもそれによる損失などの危険はすべて自分で引き受ける覚悟で行ったものと考えざるを得ないということになる。
(クーリングオフの効果)
消費者がクーリングオフをすれば契約は最初にさかのぼってなかったものとされる。業者は消費者に対していかなる内容にしろ一切の金銭の請求をする事は認められない。消費者からその契約に関して受け取った金銭があれば全額すみやかに返還しなければならない。したがって今回の場合にはクーリングオフをすることが可能。一切の支払いをする必要がない。
健康食品販売の例
新聞に入っていた折込チラシを見ていたら「この健康食品を飲んで頑固な慢性病が治った」という体験談がたくさん紹介されていた。自分も長年高血圧に悩んでいたので、高血圧に効果があるか知りたくてチラシに記載されていた「無料健康相談室」に問い合わせの電話をした。すると、すぐに「担当者を訪問させます」といって、担当者が自宅に訪問してきた。そこで、すすめられるままに1年間分の健康食品を購入する契約をしてしまう。その際、「服用方法をお教えします」からといわれて指示されるままに開封して一部を服用した。担当者が帰ってから良く考えたら高額なものなので早計だったと反省した。受け取った契約書を見たら「健康食品や化粧品の場合には使用するとクーリングオフをすることができません」と記載されていた。業者の指導で開封して服用してしまっているのでもうクーリングオフできないか?
ポイント
1. 電話はこちらからしても事業者のほうから説明すると訪問してきた場合は訪問販売にあたる
2. 「試用販売」にあたれば使用していてもすべてクーリングオフできる
(訪問販売にあたるケース)
一見、消費者が業者に連絡してきてもらったように見えるが、消費者は、この健康食品を買いたいから業者に連絡して来訪を要請したわけではなく、体験談を見てどういうものか、自分にも効果があるかなどを知りたくて問い合わせたにすぎない。それなのに、事業者のほうから説明するといって消費者の自宅に訪問してきて健康食品の販売について勧誘行為をして契約させるのは消費者にとってみれば不意打ちになる。したがってこの場合も訪問販売に該当する。要するに「健康相談室」を装って消費者に電話をかけさせるという方法で訪問販売のための見込み顧客の掘り起こしをしているものといえる。また、健康食品は政令の指定商品。そのため、契約をしてその書面の交付を受けてから8日目以内までであれば原則としてクーリングオフできる。
(政令で消耗品として指定された場合)
特定商取引法では、政令で使用するとクーリングオフができなくなる商品をとくに指定している。健康食品・化粧品・毛髪用品・石鹸・コンドーム・生理用品・防虫剤・殺虫剤・防臭剤・脱臭剤・履物など。実際トラブルとなることが訪問販売で多いのは化粧品、健康食品、コンドーム。これらの商品を(普通「政令指定の商品」といわれる)を消費者が使用してしまった場合にはクーリングオフ期間内であってもクーリングオフできなくなる。クーリングオフ期間内であってもクーリングオフできなくなる場合とは次の二つの条件を満たしている場合を指す。第一に交付された書面に「本件契約で購入した商品を使用するとクーリングオフできなくなる」(あるいは健康食品、化粧品は使用するとクーリングオフ期間内でもクーリングオフをすることができなくなります、などのように具体的な商品を説明して記述してある場合)という記載があることが必要。
この記載がない場合には、政令指定商品の消耗品を使用してしまった場合にも、全てクーリングオフができる。第二に消費者が自分で使用していること。
(クーリングオフできない範囲)
密封してあるものなどに開封して使用した場合には、使用した部分にについてクーリングオフできない。この場合のクーリングオフができなくなる範囲は同種の商品の通常小売をしている最小小売り単位で判断する。その事業者がどのような単位で販売しているかを基準にするわけではない、という点に注意が必要。訪問販売業者は多くの場合セット商品として多数量のものや多種類のものを一括販売している。1個ごとのバラ売りはしていないと主張することが少なくない。例えば「うちの場合には、セット販売しかしていないので、セット商品のうちの1つでも使用したらセット全体のクーリングオフができなくなる」という説明をしてクーリングオフを拒否しようとする。しかし法律では同種の商品の通常の小売り単位で考えることになっているので、化粧品や健康食品が通常市販されている単位で考えなければならばい。通常の小売では1個ずつの単位で販売されたいるので使用した1ビンとか1箱といった単位で考えることになる。この事例では1箱だけ開封した飲んだということなので、開封した1箱だけを買い取ることになる。残りの手の付いてないものはクーリングオフすることができる。
(試用販売の場合)
悪質な業者の中にはクーリングオフをさせないために「使用感を見るためにつけてみましょう」といって化粧品を開封させて使用したり、この事例のように「使い方をお教えしますから」などといって開封させて使用させる場合がある。しかしこうした場合には契約して購入したものを消費者自身の判断で自分のものとして使用した場合にはあたらないものといえる。一種の「試用販売」にあたるものと考えれる。そして、「試用販売」の場合には使用していても全てについてクーリングオフをすることができる。
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